古代戦士ハニワットが面白い

「打ち切りがほぼ決まっているマンガが、単行本の売上次第で延長されるかも」ということで、「古代戦士ハニワット」というマンガが話題になっています。
打ち切りを惜しむ方々が「みんな単行本を買ってくれ!」と拡散しているので、気になって読んでみました。
まあ気がついたら、既刊(1~7巻)を全部買って、時間を忘れて一気に読んでしまうほど面白かったので、「みんな単行本を買ってくれ!」と拡散する側にまわるほどドハマリしてしまった訳なんですね。

ネタバレすぎるネタバレは頑張って避けますので、読んでいってください。

語り役として不足している感はありますが、作品を知らない誰かの目に止まって、少しでも作品存続に役立ったらよいなあという気持ちで記事にしてみました。

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どんなマンガか

特撮の変身ヒーローものに近いです。

埴輪土(はにわど)という巨大なハニワに、操縦者が魂を乗り移らせて戦います。
おおざっぱに言うと、埴輪土を擁する人たちとドグーンという敵との関わりを話の軸にしている物語です。

ドグーンはコードネームで、埴輪土を管理する作中の神社関係者(いわゆるドグーン対策部隊)からは蚩尤(しゆう)と呼ばれています。

ググると神様の名前のようですが、この紹介記事ではドグーンを「神のようななにか」というスタンスで統一しています。

ドグーンの出現地点付近で生活や活動をしていた人たち、警官や役所の関係者といった人たちにもかなりの頻度でスポットがあたります。
日常から非日常への切り替わり、ドグーンに翻弄される人たちを丁寧に描いているのが、いわゆる怪獣(怪人)がでてくる作品としてとても素晴らしいです。

変身ヒーローものとはいえ、掲載誌が漫画アクションなので、大人が読むマンガというか「ヒーローが敵と戦って勝ちました」だけで終わる話ではないです。

現代日本に人智を超える化け物が現れたらどうなるかが、迫力のある群像劇で展開されます。

敵(という表現が適切なのやら)も、確かに化け物ではあるのですが、神や神に起因する災害が人形になったものというとらえ方が作中の扱いに近いです。
そのため、コードネーム通りの土偶みたいな見た目も手伝って、モンスターというよりは神々しさを感じるデザインをしています。

ここが良かった

特殊祭祀
埴輪土は操縦者が1人で動かせるものではないようで、神輿で運ばれ、神主が祈り、巫女が舞ったり、弓を鳴らす人たちがいたりと、集中を研ぎ澄ます儀式を通じてのものでないとうまく動かせないようです。

これは作中で特殊祀祀(とくしゅさいし)と呼ばれている儀式で、神のようななにかであるドグーンをまさしく祀っているかのような印象を受けました。

埴輪土とドグーンが勝負を行い、ドグーンを満足させることが人間側の勝利条件となるようで、この「おまつり」の目的となるわけです。

単純にヒーローものの戦闘シーンとしても独特で、特殊祭祀のシーンの迫力は「すげえマンガを読んでいる」と感じるオーラがあります。

第1話の特殊祭祀シーンで、警官が「オレたち・・・ 何を見せられてるんだ・・・!?」と言う場面があるのですが、まさにそれです。
(1章の警官達のセリフは、そういう役回りなのか妙に読者の心情とシンクロするものが多い)

ドグーンの神秘性
なぜドグーンは現れるのか(作中でも「たぶんこうだろう」レベルでしかわかっていない)というところにメッセージ性があります。
神のような何かであるためかなり強く、埴輪土は苦戦してばっかりなんですが、敵がただのやられ役じゃないヒーローものって良いですね。

比較的ストイック(?)な第1章のドグーンと比べると、第2章のドグーンはなんだか人間味を感じるなど、もっといろいろなドグーンがでてきそうだという期待感もよいです。

お話の中でドグーンにスポットが当たる割合も多く、ドグーンあってのハニワットというのは間違いないでしょう。

伏線の立て方、キャラクターの動かし方
情報をまったく得ずに読んだからというのもありますが、意外な展開をしたなと思う場面が多いです。

ネタバレ度の低いエピソードとしては、
比較的チャラい格好のYouTuberキャラが、その時点では公にされていないドグーンの事をペラペラ報道するのですが、
ドグーンの事を秘密にしたい神社の人たちの会話を通して、読者の視点では「なんだこいつは、けしからん!」となる訳です。

その後、日本政府がドグーンの存在を公に認めるシーンで、とあるキャラがドグーンの扱われ方に激昂します。
日常生活を脅かす化け物、駆除されるべき存在というニュアンスで、報道の受け手となる国民が第1報で受け入れる内容としては的外れとも言い切れないのですが、そのキャラには我慢のならない事でした。

さらにその後、話が進んで激昂したキャラとYouTuberが相対したとき、
YouTuberの彼は自分なりの解釈でドグーンを敬い、言葉を選んで報道していたという事実がわかり、読者目線で「あれ、こいついいやつなんじゃね?」と思ってしまったり、激昂したキャラが感心してYouTuberキャラの見学を許したり、話の組み立て方がうまいなあと感じました。

また2巻の戦闘シーンで、埴輪土(の中の人)が思い出の町を壊されて激昂するシーンがありまして、
「こういう事がここであったんだな」と読者が理解する数コマの中に1コマ、「おや?」と思うものがあったのですが、
その答えが2章で語られるなど、読者に興味を持たせる演出、読み返して驚く伏線など、読み物としてのマンガの技巧がかなり高いので、読んでいて気持ちがよいです。

賛否両論点

賛否とは書きましたが、
自分的には賛寄りでも人にすすめる時どうかなーという部分です。
人を選ぶマンガだと思います。かなり。

お話の展開速度
「登場人物たちは理解しているけど、読者はおいてけぼり」という会話がほぼなく、そういうのも親切丁寧に説明してくれているのでわかりやすい反面、なかなかお話が進まない面もあります。
戦闘シーンでも、埴輪土の戦いを見守る人達の会話という形で、読者にたくさんの解説が入ります。
さらに群像劇スタイルなので物語の視点があちこち移ります。

1話の冒頭に第1章の見せ場を持ってきた後、それまでの展開を説明するために過去の話(30時間前からここまでの話)が始まるのですが、戻ってくるまでに単行本3巻分のページをほぼすべて使う丁寧さは、展開が遅いと感じる人もいるかもしれません。

自分も特殊祭祀に圧倒されて読み進めていましたが、
1巻を読み終えた時点では面白いのかどうかの判断がつきづらかった一方、2巻からどんどん面白いと感じるようになり、次の展開が気になってしょうがないという風になりました。

そういう意味では1巻だけ読んでやめちゃう人もいそうで、もったいないなあと思います。

絵柄
独特の荒々しさ、リアリティとマンガ的なコミカルさを併せ持った絵が好きなんですが、いわゆるアニメ寄りの絵ではないので好き嫌いはわかれそう。
キャラクターの描き方が見たことある感じだなと思っていたら、「鈴木先生」の作者と同じ方でした。
あのマンガも電車の中で読んでいたら、ハマりすぎて降りる駅を何駅も通り過ぎていたという位ハマったなあ。

鈴木裁判のあたりで次回作(ハニワット)の話が動き出した旨のあとがきがありますが、個人的に鈴木裁判の後の展開がとても好きなので、あれは最終回に向けて思い切りやった成果なのかなと思ったり。

何かで映像化(ドラマ)は鈴木裁判までと聞いたので、そこは残念。

ドグーンがつよすぎる
あまり詳しくは書きませんが、ドグーンが強すぎるので、超強い主人公に快感を得るタイプのお話ではないです。
とはいえ埴輪土が弱いのではなく、相手が神っぽいなにかなので多分かなり善戦はしています。

その煽りを受けて、それなりの尺を使ったキャラクターからポッと出のモブキャラまで、お話から退場するキャラクターも多い傾向です。

逆に埴輪土が負けた事で起こる展開をしっかり描いているのも、このマンガの魅力だと私は思いますので「良かった点」のドグーンの項目に書いていました。
ですが見た目が変身ヒーローものっぽいのに、ヒーローがなかなか勝たない展開を気にする人もいるかと思って、賛否両論点に内容を分割しました。

興味を持った方はぜひ!

単行本では1~4巻が第1章。
5巻からが第2章になります。

連載継続には単行本の売上が重要らしいので、
最新刊7巻を買いつつ、まず1~4巻まで読んでみるのをおすすめします。
(3巻ラストで1話冒頭に繋がるので、そこまでは読んでみて!)

1章で世界観の説明をして、
2章でそれを膨らませてという感じなので、まだまだこれからの物語です。
ここで終わりなのはあまりにもったいない!

・・・という事で、みんなでハニワットを読もう!
単行本を買って応援しよう!

いや、本当に。

これがハニワットの7巻だ!!!!
(第1話も試し読みできます)
株式会社双葉社|古代戦士ハニワット 7

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